2016年12月2日金曜日

「間違いだらけのハラール認証」発表要旨

2016年12月3日                                       イべントBarエデン

間違いだらけのハラール認証

中田考(同志社大学客員教授)
発表要旨


1. ハラール認証を論じることの難しさ
(1) ハラール認証の欺瞞を暴くことは、ムスリムと非ムスリムの敵対を助長する。
(2) ムスリム諸国が全て反イスラーム的であり、「公的」に見える「イスラーム」自体が実は反イスラームであり、ハラール認証もそうした「公的」イスラームの一つである。 → (イスラームの唯一の合法政体)カリフ制再興だけが解答

2. ハラールとは何か
クルアーンには定義なし。定義はハディースに。
「アッラーがその書(クルアーン)の中でハラール(合法)としたものがハラールであり、ハラーム(禁止)とされたものがハラームである。黙されたものは御目こぼしであるので、アッラーからのそのお赦しを受け取れ。汝の主は忘れていたわけではない。」(ダールクトゥニー、ハーキム、タバラーニー)

3. イスラーム法とハラール
行為の5範疇 ①義務②推奨③許可(ハラール、ムバーフ)④忌避⑤禁止(ハラーム)
属人法→ 非ムスリムには義務負荷なし、許されない罪多神崇拝を犯せば不信仰者

「・・・アッラーフは他の神と並べられることは許さないが、それ以下のことなら御望みの者を赦される・・・」(4章48節)

4. 言語としての啓典
クルアーンは人間の言語であり、啓典クルアーンは有限な言語からなる導きの指針
クルアーンは、ムスリムが自分の行為の判断ができるための善悪の一般的なカテゴリーを示す十分な基準
クルアーンはハラール、ハラームの範疇を示し、個物の判断は各ムスリムに任される

5. 多神崇拝(シルク)
 クルアーンは、ユダヤ教やキリスト教を多神教とみなすのは、彼らが、教義を決める聖職者制度を作ったから。

6. クルアーンの食物規定
禁止:死肉、血、豚肉、アッラーの名を唱えられえた物以外(2:173,5;3,6:145)

6.イスラーム法上のハラーム
哺乳類、鳥類では豚以外、猛禽、猛獣。屠殺されないもの。
虫や爬虫類、両生類はイナゴとトカゲを除いてハラームが通説。
水生動物は見解が分かれる。魚以外はハラーム説。ただし魚とは何か?

7. 食品がハラールであるかどうかを誰が知るのか
肉を屠殺した者、肉を買った者
自分自身に関してはハラール、ハラームの判断を下す義務と権限(ウィラーヤ)
人間はすべて自由で自分に対する権限 他人に対して命令権を持つのはアッラーの使徒とその後継者(カリフ)だけ

8. ハラームを避けるとは
なによりもまず不正に入手されたものを避けること

9.ビドア
ビドア=新奇に人間の手によって作り上げられたもの
アラブ遊牧民の伝統では「周知のもの=善」「知らないもの=悪」

10.ハラール認証はビドア
ハラール認証は預言者や正統カリフ時代はおろか、アッバース朝、オスマン朝のカリフ国家でも、4法学祖たちも行わず、現在でさえ、サウジアラビアやイランなどには存在せず

11.イスラームの統治制度
イスラームにはアッラーの使徒の没後、聖職者も教義決定機関もなし。教義に関しては、自分で判断できなければ、誰でも自分が信ずる者を選んだ相手に質問することができるが、その場合でさえ、その回答(ファトワー)は拘束力を持たない。
社会関係行為で訴えがあった場合、カリフの代理人であるカーディーによる裁判。
行政のイニシアチブとしてはカリフの下のヒスバ(行政監督)制度

12.啓典の民
「今日(清き)良いものがあなたがたに許される。啓典を授けられた民の食べ物は、あなたがたに合法であり、あなたがたの食べ物は、彼らにも合法である。また信者の貞節な女、あなたがた以前に、啓典を授けられた民の中の貞節な女も。…」(5章5節)