2.潜在的定項:経済、技術、軍事力
国家の潜在的定項とは、国家の潜在力を短期的、中期的に利用する能力の諸要素である。経済的資源、技術的下部構造、軍備が、諸国間の勢力均衡における可変的要素である。これらの可変的諸要素が外交政策に有効に調整された形で組み込まれれば、国際的勢力均衡の中でその国の地位を高めることができる。逆に、これらの要素が適切な計画で十分機能的に再整備されていない国々の国際的な関係を反映したパワーにおいては、深刻な弱さが現れ始める。
ポスト冷戦期の国際関係において後退した最も重要な領域は、地政学と国際経済政治学であった。この枠組においては対外経済関係を方向づける経済/政治を優先することは一般戦略の重要な状要素になった。これは、グローバルな経済/政治的競争者としての大国(パワー)にいたるまで、この競争における能動的及び、受動的な地域大国の双方にとって正しい。第二次世界大戦直後に独立を勝ち取り、冷戦の間に一般的に侵略的植民政策から独立した国際経済の領域の構築を目指したこれらの地域大国は、80年代に始まりポスト冷戦期に徐々に加速した輸出依存型発展モデルによって、グローバル経済における比重を増す政策を採用した。この変革過程は、「経済/政治」を、独立性の強化と経済利益を外交戦略の主要素にした。
国内経済と貿易のバランスの問題は、対外政策形成とその政策の実施プロセスの古典的外交範囲を超えている。第二次世界大戦後、軍事/外交分野を制限された日本の経済が戦略的パラメーターとして対外政策の中核となったことが、その発展の分かりやすい例の一つである。ド・ゴールがフランス通貨フランの力を外交政策形成の主要素としたことは、財政分野における経済/政治大国(パワー)間での競争の観察による長期的な戦略上の競争の中での経済/政治の常なる重要性を証明している。今日の国際経済/政治の均衡に影響を大きな及ぼすとみられるユーロ/ドルの金融上の競合により、当然とはいえEUとアメリカの戦略関係がぎくしゃくすることになったのは、この状況の最近の分かりやすい例である。
ポスト冷戦期になって、国家のパワーのパラメーターの布置の中で経済力というものが重要な本質的変化を被った。通信技術の飛躍的進化に伴って非常に加速化した地球環境の相互依存関係は、国家戦略における非国家主体の重要性を高めた。今日では多国籍企業の間の関係は国家規模の関係を超えた影響を及ぼしうる。地域統合の実現によってより複雑になったこの状況は、侵略的植民地化政策をまさしく実行している国民経済の独立の概念を根底から揺るがしている。
今日の公式な主体と非公式な主体を合わせた国民の全体的な活動は、単に国家の支配に服するだけの国民の独立を妨げるとみなされる。多国籍企業、市民社会組織、地域的、国際的組織のような、国民-国家の構造外の主体の活動が増加することで、地球規模のマクロ戦略と地方規模でのミクロ戦略を調整しなければならないという問題が生みだされる。このように複数の主体が錯綜するダイナミックな危機的状況において、国家の固有のパワーには、この調整問題を超えうる可能性が備わっている。
この枠組において、科学技術の生産性と収益が国家のもパワーのパラメーターの可変的要素の筆頭となった。国の防衛産業の下部構造を例にとっても、経済発展のレベルにおける固定資源を正当に評価するためには、その領域の優れたマンパワーという要素を考慮にいれなくてはならない。アメリカのヘゲモニーの実現には科学技術力の進歩が大きく与っている。最近の経済サミットでいつも議題のアジェンダに上っている著作権と職業教育は、もともとは(経済)発展を可能にする(マン)パワーの獲得を望んだ副産物である。日本が経済政治大国になった主たる原因は応用技術の分野で成し遂げた進歩を商業市場に乗せたからである。それゆえ、科学技術の優位をめぐって繰り広げられる競争は、ポスト冷戦期の幕の後ろの主要な電圧の領域の一つを成していた。この原因の技術の戦争の結果の熱い戦争の結果よりずっと決定的である。熱い戦争に勝ったように見えても、長期的には技術戦争において勝った者に屈することにならざるをえない。それゆえ、世界システム中心を占める諸大国(パワー)にとっての最も重要な目標は、技術的優位を手放さないことなのである。これは大国間の組織的な闘争をも無慈悲な競合に変える。熱い戦争で一時的に同盟し連合した大国は、技術戦争では相互に対立し、(軍事的に)最も密に同盟していた期間でさえ、対立の徴候を帯びていた。軍事同盟は一時的だが、技術的優越は永続的なのである。
国際関係における覇権の維持を望むアメリカはこの覇権の基盤である技術的優位とその支配力を失わないために、国際法秩序形成を求める一方、中国を筆頭に、日本、EUなどの競争相手である勢力(パワー)と過酷に競合している。日本とは、マルティメディアと通信技術で、中国とは著作権と国際特許条約、フランスとは産業スパイ問題で対立するアメリカの目標は、将来にわたってテクノロジーの開発と支配権を手にし続けることである。
1990年代半ば頃、一方で日本にその市場を自国の資本に開放せよとの圧力を増したアメリカは、他方で将来においても情報技術の先進性を維持するために本格的に開発に注力し始めた。1995年初頭、副大統領AI ゴアは、アメリカ政府とアメリカ企業によるグローバル経済の支配の継続を目指し、国民の知識と情報の下部構造を保護するために、協同組合への呼びかけに始まり、この開発の基盤、特に、情報スーパーハイウエー、コンピューター情報網とマルティメディアの分野での独占を目標として追求した。この分野で立ち遅れた日本に対して、大胆な2010年を目標とし、250万の職を設け年間12億3千万ドルの予算をつけたプロジェクトの実施をせまった。
アメリカと中国の間での近年の最も重大な懸案となった著作権と国際特許条約の問題も、枝葉末節の国際法上の細かい数々の係争よりもはるかに深い重要性を帯びている。問題はただいくつかのアメリカ企業の国際市場での権利を守ることではない。過去25年の間に自分たちが生み出したテクノロジーが日本人たちにより器用に市場価値をもつ商品になったのがアメリカ自体の経済市場でさえ有罪宣告を受けたことは、アメリカ政府の中国に対する明白な警告であった。国際経済戦争での問題は、単なる技術の発展だけではない。その技術は同時に使用価値が高い市場での資材にもなる。日本の(経済発展の)奇蹟はこの技術的熟練の優位性を高め、国際市場で多くの分野におけるアメリカ企業の影響を殺いだ。
アメリカが中国に対して圧力をかけるもう一つの理由は、東アジアで特に頻出している新しい技術発展を支配下に置くためである。国際著作権と国際特許条約において影響力の中心であることは、アメリカは外国において新技術の開発に国際性を獲得することで、独自性と優位性を実現することができることが重要である。近年において発明の領域での東アジアの役割が徐々に増していることと、中核的テクノロジーの漏洩のリスクは相関している。今日ではアメリカ国内のテクノロジーの発明においては、アメリカ出身でない研究者たちの割合が増えている。大西洋を枢軸とする世界システムによって作られた国際法は、技術漏洩を抑えるための最も重要な手段としての役割を果たしている。このためアメリカは、中国でこの国際特許法が承認されることが人権侵害よりはるかに重要性であるとみなし、天安門事件で適用したより更に厳しい制裁を課すことを控えた。
また1995年初頭にエスカレートしたアメリカとフランスの間の産業技術スパイ事件も別の分野での主導権争いを反映していた。国際政治経済における主導権をめぐる最重要な戦略的領域の一つである航空機産業のボーイング社とエアバス社間の競争はアメリカとヨーロッパの競争にかわった。その後、完全な経済戦争に変わったこの競争は、ヨーロッパがアメリカに対して示した最も重要な勝利の一つとなった。通信技術においてアメリカと日本に遅れを取ったヨーロッパであったが、エアバス社によって航空産業における重要な進歩をなしとげた。フランス在住のアメリカの外交官も名を連ねたこの産業技術スパイ事件は大国間にも暗闘が常に存在していることを示す重要な証明である。
次第に激しくなるこの経済戦争は、将来における経済的、政治的、軍事的な争いの強度を決定する。アメリカが多方面で続けているこの戦争は同時に21世紀におけるアメリカの覇権のあり方をも規定することになる。
これらの要素の全てをリアルなパワーに返還する軍事力は、国家の平時における潜在力と、戦時においてリアルに現れるパワーの基本的な指標の一つである。軍事力は、変わりつつある危機的状況に対応する形で自己革新のパラメーターとして経済的、外交的、政治的決定から影響を受けているが、この決定に方向を与え施行する形を決めることもできる。国家の安全保障のパラメーターは経済資源の使用と移転の形に影響を与え、外交的、政治的関係の経緯もかなりな程度に決定する。
新技術の発達と危機的状況変化に(国家の)軍事部門が対応できないと、長期的には政策を内向きにさせ資源が浪費されることになる危険があり、適切な場と時においてなされた戦略的決定による自己革新と社会的紐帯を伴う軍事力の使用は、国家が国際的なパワーのヒエラルキーの中で高い地位に昇りつめることができ、政治/経済の様々な分野で影響領域を及ぼすことができる。たとえばビスマルクの鉄拳政治のパワーの源泉であった軍事力は、同時に政治におけるドイツ統一、経済におけるドイツの発展の結果であり、その反映でもあった。同様に、ピョートル大帝が軍事部門で行った改革が、平原を国境としていたモスクワ大公国から変貌しーラシア全体で戦略的主導権を握ることを目指すようになったロシア帝国が領土を拡大していくにあたって、その政治、経済、外交の諸々の要素をリアルパワーの土台へと変換させたのである。今日のアメリカの軍事部門とアメリカの経済、外交の間には直接的な関係があり、その関係は地球の主要な大陸から遠く離れたアメリカが国際関係を決定的な影響を及ぼす覇権を有する超大国(パワー)にしている主たる要因の一つである。
国家の潜在的定項とは、国家の潜在力を短期的、中期的に利用する能力の諸要素である。経済的資源、技術的下部構造、軍備が、諸国間の勢力均衡における可変的要素である。これらの可変的諸要素が外交政策に有効に調整された形で組み込まれれば、国際的勢力均衡の中でその国の地位を高めることができる。逆に、これらの要素が適切な計画で十分機能的に再整備されていない国々の国際的な関係を反映したパワーにおいては、深刻な弱さが現れ始める。
ポスト冷戦期の国際関係において後退した最も重要な領域は、地政学と国際経済政治学であった。この枠組においては対外経済関係を方向づける経済/政治を優先することは一般戦略の重要な状要素になった。これは、グローバルな経済/政治的競争者としての大国(パワー)にいたるまで、この競争における能動的及び、受動的な地域大国の双方にとって正しい。第二次世界大戦直後に独立を勝ち取り、冷戦の間に一般的に侵略的植民政策から独立した国際経済の領域の構築を目指したこれらの地域大国は、80年代に始まりポスト冷戦期に徐々に加速した輸出依存型発展モデルによって、グローバル経済における比重を増す政策を採用した。この変革過程は、「経済/政治」を、独立性の強化と経済利益を外交戦略の主要素にした。
国内経済と貿易のバランスの問題は、対外政策形成とその政策の実施プロセスの古典的外交範囲を超えている。第二次世界大戦後、軍事/外交分野を制限された日本の経済が戦略的パラメーターとして対外政策の中核となったことが、その発展の分かりやすい例の一つである。ド・ゴールがフランス通貨フランの力を外交政策形成の主要素としたことは、財政分野における経済/政治大国(パワー)間での競争の観察による長期的な戦略上の競争の中での経済/政治の常なる重要性を証明している。今日の国際経済/政治の均衡に影響を大きな及ぼすとみられるユーロ/ドルの金融上の競合により、当然とはいえEUとアメリカの戦略関係がぎくしゃくすることになったのは、この状況の最近の分かりやすい例である。
ポスト冷戦期になって、国家のパワーのパラメーターの布置の中で経済力というものが重要な本質的変化を被った。通信技術の飛躍的進化に伴って非常に加速化した地球環境の相互依存関係は、国家戦略における非国家主体の重要性を高めた。今日では多国籍企業の間の関係は国家規模の関係を超えた影響を及ぼしうる。地域統合の実現によってより複雑になったこの状況は、侵略的植民地化政策をまさしく実行している国民経済の独立の概念を根底から揺るがしている。
今日の公式な主体と非公式な主体を合わせた国民の全体的な活動は、単に国家の支配に服するだけの国民の独立を妨げるとみなされる。多国籍企業、市民社会組織、地域的、国際的組織のような、国民-国家の構造外の主体の活動が増加することで、地球規模のマクロ戦略と地方規模でのミクロ戦略を調整しなければならないという問題が生みだされる。このように複数の主体が錯綜するダイナミックな危機的状況において、国家の固有のパワーには、この調整問題を超えうる可能性が備わっている。
この枠組において、科学技術の生産性と収益が国家のもパワーのパラメーターの可変的要素の筆頭となった。国の防衛産業の下部構造を例にとっても、経済発展のレベルにおける固定資源を正当に評価するためには、その領域の優れたマンパワーという要素を考慮にいれなくてはならない。アメリカのヘゲモニーの実現には科学技術力の進歩が大きく与っている。最近の経済サミットでいつも議題のアジェンダに上っている著作権と職業教育は、もともとは(経済)発展を可能にする(マン)パワーの獲得を望んだ副産物である。日本が経済政治大国になった主たる原因は応用技術の分野で成し遂げた進歩を商業市場に乗せたからである。それゆえ、科学技術の優位をめぐって繰り広げられる競争は、ポスト冷戦期の幕の後ろの主要な電圧の領域の一つを成していた。この原因の技術の戦争の結果の熱い戦争の結果よりずっと決定的である。熱い戦争に勝ったように見えても、長期的には技術戦争において勝った者に屈することにならざるをえない。それゆえ、世界システム中心を占める諸大国(パワー)にとっての最も重要な目標は、技術的優位を手放さないことなのである。これは大国間の組織的な闘争をも無慈悲な競合に変える。熱い戦争で一時的に同盟し連合した大国は、技術戦争では相互に対立し、(軍事的に)最も密に同盟していた期間でさえ、対立の徴候を帯びていた。軍事同盟は一時的だが、技術的優越は永続的なのである。
国際関係における覇権の維持を望むアメリカはこの覇権の基盤である技術的優位とその支配力を失わないために、国際法秩序形成を求める一方、中国を筆頭に、日本、EUなどの競争相手である勢力(パワー)と過酷に競合している。日本とは、マルティメディアと通信技術で、中国とは著作権と国際特許条約、フランスとは産業スパイ問題で対立するアメリカの目標は、将来にわたってテクノロジーの開発と支配権を手にし続けることである。
1990年代半ば頃、一方で日本にその市場を自国の資本に開放せよとの圧力を増したアメリカは、他方で将来においても情報技術の先進性を維持するために本格的に開発に注力し始めた。1995年初頭、副大統領AI ゴアは、アメリカ政府とアメリカ企業によるグローバル経済の支配の継続を目指し、国民の知識と情報の下部構造を保護するために、協同組合への呼びかけに始まり、この開発の基盤、特に、情報スーパーハイウエー、コンピューター情報網とマルティメディアの分野での独占を目標として追求した。この分野で立ち遅れた日本に対して、大胆な2010年を目標とし、250万の職を設け年間12億3千万ドルの予算をつけたプロジェクトの実施をせまった。
アメリカと中国の間での近年の最も重大な懸案となった著作権と国際特許条約の問題も、枝葉末節の国際法上の細かい数々の係争よりもはるかに深い重要性を帯びている。問題はただいくつかのアメリカ企業の国際市場での権利を守ることではない。過去25年の間に自分たちが生み出したテクノロジーが日本人たちにより器用に市場価値をもつ商品になったのがアメリカ自体の経済市場でさえ有罪宣告を受けたことは、アメリカ政府の中国に対する明白な警告であった。国際経済戦争での問題は、単なる技術の発展だけではない。その技術は同時に使用価値が高い市場での資材にもなる。日本の(経済発展の)奇蹟はこの技術的熟練の優位性を高め、国際市場で多くの分野におけるアメリカ企業の影響を殺いだ。
アメリカが中国に対して圧力をかけるもう一つの理由は、東アジアで特に頻出している新しい技術発展を支配下に置くためである。国際著作権と国際特許条約において影響力の中心であることは、アメリカは外国において新技術の開発に国際性を獲得することで、独自性と優位性を実現することができることが重要である。近年において発明の領域での東アジアの役割が徐々に増していることと、中核的テクノロジーの漏洩のリスクは相関している。今日ではアメリカ国内のテクノロジーの発明においては、アメリカ出身でない研究者たちの割合が増えている。大西洋を枢軸とする世界システムによって作られた国際法は、技術漏洩を抑えるための最も重要な手段としての役割を果たしている。このためアメリカは、中国でこの国際特許法が承認されることが人権侵害よりはるかに重要性であるとみなし、天安門事件で適用したより更に厳しい制裁を課すことを控えた。
また1995年初頭にエスカレートしたアメリカとフランスの間の産業技術スパイ事件も別の分野での主導権争いを反映していた。国際政治経済における主導権をめぐる最重要な戦略的領域の一つである航空機産業のボーイング社とエアバス社間の競争はアメリカとヨーロッパの競争にかわった。その後、完全な経済戦争に変わったこの競争は、ヨーロッパがアメリカに対して示した最も重要な勝利の一つとなった。通信技術においてアメリカと日本に遅れを取ったヨーロッパであったが、エアバス社によって航空産業における重要な進歩をなしとげた。フランス在住のアメリカの外交官も名を連ねたこの産業技術スパイ事件は大国間にも暗闘が常に存在していることを示す重要な証明である。
次第に激しくなるこの経済戦争は、将来における経済的、政治的、軍事的な争いの強度を決定する。アメリカが多方面で続けているこの戦争は同時に21世紀におけるアメリカの覇権のあり方をも規定することになる。
これらの要素の全てをリアルなパワーに返還する軍事力は、国家の平時における潜在力と、戦時においてリアルに現れるパワーの基本的な指標の一つである。軍事力は、変わりつつある危機的状況に対応する形で自己革新のパラメーターとして経済的、外交的、政治的決定から影響を受けているが、この決定に方向を与え施行する形を決めることもできる。国家の安全保障のパラメーターは経済資源の使用と移転の形に影響を与え、外交的、政治的関係の経緯もかなりな程度に決定する。
新技術の発達と危機的状況変化に(国家の)軍事部門が対応できないと、長期的には政策を内向きにさせ資源が浪費されることになる危険があり、適切な場と時においてなされた戦略的決定による自己革新と社会的紐帯を伴う軍事力の使用は、国家が国際的なパワーのヒエラルキーの中で高い地位に昇りつめることができ、政治/経済の様々な分野で影響領域を及ぼすことができる。たとえばビスマルクの鉄拳政治のパワーの源泉であった軍事力は、同時に政治におけるドイツ統一、経済におけるドイツの発展の結果であり、その反映でもあった。同様に、ピョートル大帝が軍事部門で行った改革が、平原を国境としていたモスクワ大公国から変貌しーラシア全体で戦略的主導権を握ることを目指すようになったロシア帝国が領土を拡大していくにあたって、その政治、経済、外交の諸々の要素をリアルパワーの土台へと変換させたのである。今日のアメリカの軍事部門とアメリカの経済、外交の間には直接的な関係があり、その関係は地球の主要な大陸から遠く離れたアメリカが国際関係を決定的な影響を及ぼす覇権を有する超大国(パワー)にしている主たる要因の一つである。