2018年8月5日日曜日

東西の自然理解 - 環境・生命・倫理 ー イスラームの立場から

於:2018年8月5日 京都パレスサイドホテル 東西宗教交流学会

「東西の自然理解 - 環境・生命・倫理」 「イスラームの立場から

                        中田考(同志社大学客員教授)

1.現代のイスラーム世界でのディスコース
* 大量に「研究」あり。例えば、Dr.Derya Iner(Charles Sturt Univ.)「イスラームにおける環境倫理と生命倫理(Emvimental Ethics and Bioethics in Islam)」 https://www.isra.org.au/site/user-assets/docs/workshop-2a--beliefs-providing-moral-and-ethical-framework--islam.pdf
* 問題を考える手掛かりにならないことはないが、全く信用できない
* 現代西欧の同名の学問論文のフォーマット(環境倫理、生命倫理)にクルアーンやハディースなどの適当な文言を代入しただけ
* 重要なのは、ここのテキストの断片ではなく、伝統イスラーム学には「環境倫理」、「生命倫理」などとおう問題設定、学問分野が存在しなかったこと

2.現代イスラーム世界のディスコースの問題点
* 「西欧の世界支配の19世紀」のムスリム世界の植民地化
* 現在世界に存在する「宗教」は、リヴァイアサン(主権国家:権力)とマモン(富:金)の配偶神に隷属する偶像崇拝(「拝金教」by和田秀樹)のみ
* 自称ムスリムたちも実際に崇拝しているのは、神ではなく国家。好例がハラール認証。

3.イスラームの合法秩序
* カリフ制 vs  領域国民国家システム
* 金本位制 vs 不換紙幣 
 法人国家と紙幣 = どちらも実体のない、名前、記号 = 偶像

4.イスラームの二元論的世界観
* 純粋一神教 = 二元論(神=創造主 vs 世界=被造物)
* 「イスラームは現世(ドンヤー)と来世(アーヒラ) or現世と宗教(ディーン)」
* 広義のイスラーム = 現世と来世 = 世界のあり方の全て
* 狭義のイスラーム ≒ 宗教=来世 (現世と来世の二元論→イスラーム的「政教」分離)

5.イスラームのアニムズム的世界観
* 森羅万象がそれぞれの原語で神を称える
「7つの天と大地、またその間にある凡てのものは、かれを讃える。何ものも、かれを讃えて唱念しないものはない。だがあなたがたは、それらが如何に唱念しているかを理解しない。…」(クルアーン17章44節)
* 身体部位も全て意識を持つ
「その日(最後の審判)、アッラーの敵は集められ、火獄への列に連らなる。かれらが(審判の席)に来ると、その耳や目や皮膚は、かれらの行ってきたことを、かれらの意に背いて証言する。するとかれらは、(自分の)皮膚に向かって言う。「あなたがたは何故わたしたちに背いて、証言をするのですか。」それらは(答えて)「凡てのものに語らせられるようにされたアッラーが、わたしたちに語らせられます。かれは最初にあなたがたを創り、そしてかれの御許に帰らせられます。」と言う。(41章19‐21節)

6.死体を傷つけることの禁止
「死体の骨を折ることは生者の骨を折るに等しい」(イブン・マージャ、アブー・ダーウードのハディース[預言者ムハンマドの言葉]集成)イブン・アブドルバッル(マーリキー派法学者1071年没)注釈「死者も生者と同じように苦しむ」

7.世界の無時間性
* 世界は全て神の永遠の知の中に恒存
* 来世も神の視点からは現存