「サウジと断交でどうなるカタール」
於:2017年6月18日 イベントバー・エデン
中田考(同志社大学客員教授)
*6月5日:サウジアラビア、UAE、エジプトがテロ支援を口実にカタルと断交(輸出入・領空通航禁止、カタル人国外追放)その後イエメン、バハレーン、モーリタニア、モルジブ(リビヤ)が追随
*サウジ自身の発案でなく、UAEの駐米大使(Yousef al-Otaiba)が、米国のイスラエル系のネオコンなシンクタンク(Foundation for Defense of Democracies)と謀って進めた(ジム・ローブ)
*カタル(1995年王室革命ハリーファ→ハマド2013年タミームに譲位)天然ガス産出量 世界第4位(イランと共有するガス田(ノースドーム・ガス田/サウスパルス・ガス田)は世界最大埋蔵量)
カタルは日本の天然ガスの輸入先第4位 日本はカタルの輸出先第1位
石油に関してもカタルは輸入先第3位 第1位がサウジアラビア、第2位がUAE(アラブ首長国連邦)
サウジアラビアは世界最大の産油国(世界の石油の60%がペルシャ/アラブ湾岸に集中)
*日本のエネルギー事情にも影響
(マクロ)湾岸の緊張激化:イランとサウジの対立+見通しの立たないトランプ政権の迷走
(ミクロ)サウジが日本にカタルとの貿易の中止の圧力をかければエネルギー事情逼迫
*現時点では2021年に契約が切れるカタルとのガス供給契約の更新で日本が優位に
*サウジ、UAE、カタルはGCC湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council)加盟国
*GCC:1979年2月のイラン・イスラーム革命をうけて、1981年5月25日イランを仮想敵国に湾岸アラブ産油国による安全保障機構として設立された(イラン革命以前の敵はアラブ社会主義諸国)
*GCC諸国の特徴は石油収入による豊さと外国人労働者比率の高さ GCC外国人比率(2009年):サウジ32 オマーン35.7 バハレーン49.4 クウェイト68.1 カタル81.0 UAE88.1
*加盟国内最大人口、世界一の石油埋蔵量、二聖地マッカ、マディーナを擁するサウジが盟主的地位
「(クウェイトおよび湾岸アラブ諸国は『国籍(citizenship)』に基くエスノクラシー)『国籍に基くエスノクラシー』という分類は、ロングヴァが論じるように、やや奇妙だ。というのも、『人種』や言語、性別を元に同一国民の中で権利の格差を設けることは国際的にも非難されうるが、国籍に基く権利の格差は国際的に当然のこととみなされているため、議論にすらならないからである。」松尾昌樹「湾岸アラブ諸国のエスノクラシー」(『白山人類学』16号2013年3月)
*そもそも「国民国家」とも言えない国々
*2014年、エジプトのシシが軍事クーデターでムルスィー(ムスリム同胞団)政権を転覆した時、シシを支持したサウジ、UAEがシシ支持を拒否したカタルから大使召還(8か月)
*カタルのテロ支援容疑:カタル王族26人がイラクで誘拐。身代金10億ドル支払い。7億ドルはイランとイラクのシーア派民兵組織、残りの3億ドルはシャーム自由人やシャーム解放委員会に渡ったとされる(FT紙)。
*カタルの独自性:1996年アルジャジーラ設立アラブで最も自由なテレビ、アラブ「民主化」に貢献
全方位外交:特に「国際テロ組織」タリバンの政治局をドーハに開設(カルダーウィーが仲介)
*断交のきっかけ:カタル国営通信が、イランとの友好、同胞団支持を放映(ハッキング??)
*サウジとUAEは、カタルのテロ支援(イラン、同胞団(ハマス)、IS)を口実にカタルと断交
三正面戦争:1.イラン(シーア派) 2.ムスリム同胞団、3.イスラーム国
*全て勝てない戦い。しかしトランプの反イスラーム政策に乗じて攻勢。
*トルコとイラン、即座に支持表明。イラン・トルコは物資輸出、トルコは軍の増派(五千人)決定
*トルコ・カタル枢軸:ムスリム同胞団支援
トルコ:伝統スーフィズム(ナクシュバンディー)+ムスリム同胞団
カタル:ワッハーブ派、ムスリム同胞団、タブリーグ
*UAEの主要敵はムスリム同胞団、対ムスリム同胞団で、サウジアラビアとエジプトが野合
*湾岸戦争以降サウジはムスリム同胞団によるワッハーブ派の政治的覚醒を強く警戒
UAEはアラブの春以降、ムスリム同胞団がクーデターを計画したとしてテロ組織認定し弾圧
*ムスリム同胞団:アラブ諸国に会員を抱えるアラブ最大の汎アラブ・イスラーム改革運動
インド亜大陸のジャマーアテ・イスラーミー、トルコのメッリー・ギョレシュ、AKP(公正発展党)、インドネシアのPKS(公正繁栄党)、マレーシアのPAS(汎マレーシア・イスラーム党)、アフガニスタンのヒズビ・イスラーミーなどと連携、欧米でも協力して活動
*対イランで最も重要なのはイエメン(イラク、シリア、レバノンは既に敗北が確定)。
2015年3月イランの影響を受けたシーア派ザイド派のフーシー派がクーデターで首都サナア制圧
→ サウジアラビアが主導しアラブ連合軍を組織。亡命したハーディー大統領を担いで内戦介入
イエメンの食料不足、コレラ蔓延、空爆の巻添え被害増大など人道危機深刻化
国際人権機関からの批難にもかかわらず首都奪回できず
*対イラン(シーア派)外交戦争で負け続けたサウジは、国境を接するイエメンだけは失うまいとなりふり構わず金にあかせてアラブ諸国から傭兵を掻き集めて軍事介入したが、最貧国のイエメンにすら勝てないサウジがトルコとイランを味方につけた世界最富裕国の一つカタルに勝てるか?
*カタルはトルコとの枢軸同盟強化。サウジ、UAEはトルコとも敵対。(エジプトは以前から)
*サウジがイランに対抗するためには、スンナ派を糾合しなければならないが、反シーアのサラフィーの看板(9・11の実行者19人中15人がサウジ人)、スンナ派団結の象徴カリフの旗印はイスラーム国に奪われる
*スンナ派最大のムスリム同胞団ネットワークも敵に回す。
ハマスをテロリストと呼ぶことで、アラブの大義も裏切り、イスラエルとアメリカの手先に成り下がる
於:2017年6月18日 イベントバー・エデン
中田考(同志社大学客員教授)
*6月5日:サウジアラビア、UAE、エジプトがテロ支援を口実にカタルと断交(輸出入・領空通航禁止、カタル人国外追放)その後イエメン、バハレーン、モーリタニア、モルジブ(リビヤ)が追随
*サウジ自身の発案でなく、UAEの駐米大使(Yousef al-Otaiba)が、米国のイスラエル系のネオコンなシンクタンク(Foundation for Defense of Democracies)と謀って進めた(ジム・ローブ)
*カタル(1995年王室革命ハリーファ→ハマド2013年タミームに譲位)天然ガス産出量 世界第4位(イランと共有するガス田(ノースドーム・ガス田/サウスパルス・ガス田)は世界最大埋蔵量)
カタルは日本の天然ガスの輸入先第4位 日本はカタルの輸出先第1位
石油に関してもカタルは輸入先第3位 第1位がサウジアラビア、第2位がUAE(アラブ首長国連邦)
サウジアラビアは世界最大の産油国(世界の石油の60%がペルシャ/アラブ湾岸に集中)
*日本のエネルギー事情にも影響
(マクロ)湾岸の緊張激化:イランとサウジの対立+見通しの立たないトランプ政権の迷走
(ミクロ)サウジが日本にカタルとの貿易の中止の圧力をかければエネルギー事情逼迫
*現時点では2021年に契約が切れるカタルとのガス供給契約の更新で日本が優位に
*サウジ、UAE、カタルはGCC湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council)加盟国
*GCC:1979年2月のイラン・イスラーム革命をうけて、1981年5月25日イランを仮想敵国に湾岸アラブ産油国による安全保障機構として設立された(イラン革命以前の敵はアラブ社会主義諸国)
*GCC諸国の特徴は石油収入による豊さと外国人労働者比率の高さ GCC外国人比率(2009年):サウジ32 オマーン35.7 バハレーン49.4 クウェイト68.1 カタル81.0 UAE88.1
*加盟国内最大人口、世界一の石油埋蔵量、二聖地マッカ、マディーナを擁するサウジが盟主的地位
「(クウェイトおよび湾岸アラブ諸国は『国籍(citizenship)』に基くエスノクラシー)『国籍に基くエスノクラシー』という分類は、ロングヴァが論じるように、やや奇妙だ。というのも、『人種』や言語、性別を元に同一国民の中で権利の格差を設けることは国際的にも非難されうるが、国籍に基く権利の格差は国際的に当然のこととみなされているため、議論にすらならないからである。」松尾昌樹「湾岸アラブ諸国のエスノクラシー」(『白山人類学』16号2013年3月)
*そもそも「国民国家」とも言えない国々
*2014年、エジプトのシシが軍事クーデターでムルスィー(ムスリム同胞団)政権を転覆した時、シシを支持したサウジ、UAEがシシ支持を拒否したカタルから大使召還(8か月)
*カタルのテロ支援容疑:カタル王族26人がイラクで誘拐。身代金10億ドル支払い。7億ドルはイランとイラクのシーア派民兵組織、残りの3億ドルはシャーム自由人やシャーム解放委員会に渡ったとされる(FT紙)。
*カタルの独自性:1996年アルジャジーラ設立アラブで最も自由なテレビ、アラブ「民主化」に貢献
全方位外交:特に「国際テロ組織」タリバンの政治局をドーハに開設(カルダーウィーが仲介)
*断交のきっかけ:カタル国営通信が、イランとの友好、同胞団支持を放映(ハッキング??)
*サウジとUAEは、カタルのテロ支援(イラン、同胞団(ハマス)、IS)を口実にカタルと断交
三正面戦争:1.イラン(シーア派) 2.ムスリム同胞団、3.イスラーム国
*全て勝てない戦い。しかしトランプの反イスラーム政策に乗じて攻勢。
*トルコとイラン、即座に支持表明。イラン・トルコは物資輸出、トルコは軍の増派(五千人)決定
*トルコ・カタル枢軸:ムスリム同胞団支援
トルコ:伝統スーフィズム(ナクシュバンディー)+ムスリム同胞団
カタル:ワッハーブ派、ムスリム同胞団、タブリーグ
*UAEの主要敵はムスリム同胞団、対ムスリム同胞団で、サウジアラビアとエジプトが野合
*湾岸戦争以降サウジはムスリム同胞団によるワッハーブ派の政治的覚醒を強く警戒
UAEはアラブの春以降、ムスリム同胞団がクーデターを計画したとしてテロ組織認定し弾圧
*ムスリム同胞団:アラブ諸国に会員を抱えるアラブ最大の汎アラブ・イスラーム改革運動
インド亜大陸のジャマーアテ・イスラーミー、トルコのメッリー・ギョレシュ、AKP(公正発展党)、インドネシアのPKS(公正繁栄党)、マレーシアのPAS(汎マレーシア・イスラーム党)、アフガニスタンのヒズビ・イスラーミーなどと連携、欧米でも協力して活動
*対イランで最も重要なのはイエメン(イラク、シリア、レバノンは既に敗北が確定)。
2015年3月イランの影響を受けたシーア派ザイド派のフーシー派がクーデターで首都サナア制圧
→ サウジアラビアが主導しアラブ連合軍を組織。亡命したハーディー大統領を担いで内戦介入
イエメンの食料不足、コレラ蔓延、空爆の巻添え被害増大など人道危機深刻化
国際人権機関からの批難にもかかわらず首都奪回できず
*対イラン(シーア派)外交戦争で負け続けたサウジは、国境を接するイエメンだけは失うまいとなりふり構わず金にあかせてアラブ諸国から傭兵を掻き集めて軍事介入したが、最貧国のイエメンにすら勝てないサウジがトルコとイランを味方につけた世界最富裕国の一つカタルに勝てるか?
*カタルはトルコとの枢軸同盟強化。サウジ、UAEはトルコとも敵対。(エジプトは以前から)
*サウジがイランに対抗するためには、スンナ派を糾合しなければならないが、反シーアのサラフィーの看板(9・11の実行者19人中15人がサウジ人)、スンナ派団結の象徴カリフの旗印はイスラーム国に奪われる
*スンナ派最大のムスリム同胞団ネットワークも敵に回す。
ハマスをテロリストと呼ぶことで、アラブの大義も裏切り、イスラエルとアメリカの手先に成り下がる
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