「中東溶解‐呪われたクルド民族主義 ― カイロ大学の“先輩”小池百合子を語る」
2017/10/3 イベントバー・エデン 同志社大学客員教授 中田考
発表要旨・資料
*中東人の発言は全て(一つの例外もなく)ポジショントーク、小池はそれを日本に。
*中東人類学者アーネスト・ゲルナー(Ernest Gellner, d.1995)のナショナリズムの定義
「ナショナリズムとは、第一義的には、政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならないと主張する一つの政治的原理である」
*アラブの二つの定義:①アラブ人を父とする者 ②アラビア語を話す者(ムスタウラブ)
①カフターン族(南アラブ) ヤアラブ・ブン・カフターンを名祖
②アドナーン族(北アラブ) マアド・ブン・アドナーンを名祖(アブラハムの子イシュマエル[イスマーイル]を太祖)
つまり、小池百合子はアラブ人(ムスタウラブ)
*「民族(部族、人種、語族)」概念は古来より存在。しかし現代の「nation」とは別。
古代アラブにも疑似ナショナリズム的イデオロギー存在:アサビーヤ、ジャーヒリーヤ
「世情の堕落の多くは、財貨や名声などを取って、ハッド刑を免除することから生じるのである。それはアラブやトルコやクルドの遊牧民、村落民、都市民、農民、カイスやヤマンの諸党派、定着民の指導者や名士や貧者たち、将軍や将校や兵士たちなどの堕落の最大の原因なのである。」
「血縁、郷土、人種、法学派、神秘主義教団など、イスラームとクルアーンの呼び掛けからそらすものはすべて、ジャーヒリーヤ時代の挽歌なのである。」イブン・タイミーヤ(1328年没)
*ナショナリズム:第一次世界大戦、第二次世界大戦の原因、史上最悪のイデオロギー
イスラームはジャーヒリーヤと戦うためにもたらされた。「現代のジャーヒリーヤ」ナショナリズムこそイスラームが戦うべき対象。
*ダウトオウル『戦略的縦深』
「国際関係の中でのある国家の固有の存在感とパワー(G)に関し、こうした関心に対応する可変的な定義を発展させることができる。定数(SV)、歴史(T)、地理(C)、人口(N)、文化(K)として、変数(PV)は、経済力(Ek)、技術力(Tk)、軍事力(Ak)として定義され、一国の力をこのような形で示すことができる。
G=(SV+PV)×(SZ×SP×SI)
この定式で、SZは戦略思考、SPは戦略的計画、SIは政治的意思を意味する。
SV=T+C+N+K & PV=Ek+Tk+Ak となるので、この式を展開すると
G={(T+C+N+K)+Ek+Tk+Ak)}×(SZ×SP×SI)となる。」
国際情勢分析の3レベル:①地政学(長期)②(中期)③国際関係(短期)
*中東溶解:①シリア、②イラク、③イエメン、④湾岸諸国 (遠因:カリフ制の崩壊)
①シリア:25万人以上が死亡、総人口の約半数1千万人近くが難民化
(イラン・イラク戦争でイラン支援)
*直接の原因:1.アラブの春 2.1982年ムスリム同胞団殲滅(ハマー事件)
←1965年サイイド・クトゥブ処刑、1949年バンナー暗殺(エジプト)
(ムスリム同胞団vsアラブ社会主義 ←→ アラブ王政諸国vsアラブ社会主義諸国)
*トルコ国境の町コバネの対IS戦いで国際テロ組織PKK(クルド労働党)の分派のクルド勢力[クルド民主統一党(PYD)人民防衛隊(YPG)]支援 ペシュメルガ協力
②イラク:破綻国家 内戦、難民、国家分裂(2014年イスラーム国、クルド独立)
*直接の原因:1.湾岸戦争(1990-1年)シーア派、クルド人蜂起弾圧(米見捨てる)
2.アメリカのイラク侵攻、サダム政権崩壊(2003年)、イラク分裂
(2001年「9・11」→ アメリカ軍アフガニスタン侵攻タリバン政権崩壊
→ アフガニスタン破綻国家化)
3.シーア派政権[特にマーリキー政権在位(2006-2014年)]の悪政
(シーア派各派、サダムの治世にイランが庇護)
4.アラブの春
A.スンナ派弾圧→ 2014年 スンナ派反シーア強硬派イスラーム国誕生
B.クルド自治政府予算カット→ 2017年 クルド自治政府独立国民投票
③イエメン:最悪の人道危機 サウジ主導のアラブ連盟軍介入以来8千人以上が死亡
コレラ感染の疑い37万人
*直接の原因:1.イラン・イスラーム革命 1979年 シーア派革命輸出
2.アラブの春 2012年アリー・サーリフ政権崩壊
3.ハーディー政権崩壊 2015年 シーア派ザイド派首都サナア制圧
サウジ主導のアラブ連合軍サナア空爆
④湾岸諸国:サウジアラビア(世界第4位の軍事大国)「宮廷クーデター」2017年
M.B.N皇太子廃位し、国王の息子ムハンマド・ブン・サルマン(M.B.S)新皇太子
M.B.S 2015年国防大臣としてイエメン内戦介入
2017年6月 カタル断交(対イラン安全保障体制としてのGCC崩壊の危機)
2017年9月 サルマン・アウダら社会派イスラーム学者ら逮捕
サウジアラビア:シーア派、ムスリム同胞団、ワーッハーブの全てを敵に
*クルド人は存在するのか?
クルド人は「3千万人の人口を有する国家を持たない最大の民族」なのか???
クルマンジー語(北部クルド語)とソラニー語(南部クルド語)は互いに通じない。
*クルディスタン独立
1.1920年 セーブル条約でクルディスタン独立承認(1923年ローザンヌ条約で反故)
2.1946年 クルディスタン人民共和国(ソ連によってイラン北部に建国)
3.1990-1年 湾岸戦争:アメリカはサダムフセイン政権への反乱を煽り梯子を外す
→ クルド人自治地域(1970~ ハラブジャ事件1988年)に飛行禁止地帯
2003年クルド地域(自治)政府(KRG)
2014年 イスラーム国台頭によるイラク政府軍撤退、KRG事実上の独立
*クルディスタン民主党(KDP)、クルディスタン愛国同盟(PUK)の対立、政治的腐敗
*2003年サダムフセイン政権崩壊直後比較的治安定のクルディスタン復興バブル
*KRGの腐敗、マーリキーとバルザーニーの対立による中央政府からの配布金カット
*2014年以降、油田地帯のキリクークを支配下においたが経済回復せず
*2017年9月26日 クルディスタン独立投票
イラクだけでなく隣国トルコ、イランも反対 ←→ 賛成派イスラエルだけ
イラクは空路閉鎖
*クルド人は世俗国家に賛成か?
「失われたクルド人」東アラブの近代スーフィズム覚醒運動の担い手としてのクルド人
ハーリド・バグダーディー(1827年没)
トルコ共和国成立時のシャイフ・サイードの乱(1925年)
現在のトルコのマドラサ・ネットワーク
シリア前ムフティー・アフマド・クフタロー(2014年没)
アサドの御用学者ブーティー(2013年没)
2017/10/3 イベントバー・エデン 同志社大学客員教授 中田考
発表要旨・資料
*中東人の発言は全て(一つの例外もなく)ポジショントーク、小池はそれを日本に。
*中東人類学者アーネスト・ゲルナー(Ernest Gellner, d.1995)のナショナリズムの定義
「ナショナリズムとは、第一義的には、政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならないと主張する一つの政治的原理である」
*アラブの二つの定義:①アラブ人を父とする者 ②アラビア語を話す者(ムスタウラブ)
①カフターン族(南アラブ) ヤアラブ・ブン・カフターンを名祖
②アドナーン族(北アラブ) マアド・ブン・アドナーンを名祖(アブラハムの子イシュマエル[イスマーイル]を太祖)
つまり、小池百合子はアラブ人(ムスタウラブ)
*「民族(部族、人種、語族)」概念は古来より存在。しかし現代の「nation」とは別。
古代アラブにも疑似ナショナリズム的イデオロギー存在:アサビーヤ、ジャーヒリーヤ
「世情の堕落の多くは、財貨や名声などを取って、ハッド刑を免除することから生じるのである。それはアラブやトルコやクルドの遊牧民、村落民、都市民、農民、カイスやヤマンの諸党派、定着民の指導者や名士や貧者たち、将軍や将校や兵士たちなどの堕落の最大の原因なのである。」
「血縁、郷土、人種、法学派、神秘主義教団など、イスラームとクルアーンの呼び掛けからそらすものはすべて、ジャーヒリーヤ時代の挽歌なのである。」イブン・タイミーヤ(1328年没)
*ナショナリズム:第一次世界大戦、第二次世界大戦の原因、史上最悪のイデオロギー
イスラームはジャーヒリーヤと戦うためにもたらされた。「現代のジャーヒリーヤ」ナショナリズムこそイスラームが戦うべき対象。
*ダウトオウル『戦略的縦深』
「国際関係の中でのある国家の固有の存在感とパワー(G)に関し、こうした関心に対応する可変的な定義を発展させることができる。定数(SV)、歴史(T)、地理(C)、人口(N)、文化(K)として、変数(PV)は、経済力(Ek)、技術力(Tk)、軍事力(Ak)として定義され、一国の力をこのような形で示すことができる。
G=(SV+PV)×(SZ×SP×SI)
この定式で、SZは戦略思考、SPは戦略的計画、SIは政治的意思を意味する。
SV=T+C+N+K & PV=Ek+Tk+Ak となるので、この式を展開すると
G={(T+C+N+K)+Ek+Tk+Ak)}×(SZ×SP×SI)となる。」
国際情勢分析の3レベル:①地政学(長期)②(中期)③国際関係(短期)
*中東溶解:①シリア、②イラク、③イエメン、④湾岸諸国 (遠因:カリフ制の崩壊)
①シリア:25万人以上が死亡、総人口の約半数1千万人近くが難民化
(イラン・イラク戦争でイラン支援)
*直接の原因:1.アラブの春 2.1982年ムスリム同胞団殲滅(ハマー事件)
←1965年サイイド・クトゥブ処刑、1949年バンナー暗殺(エジプト)
(ムスリム同胞団vsアラブ社会主義 ←→ アラブ王政諸国vsアラブ社会主義諸国)
*トルコ国境の町コバネの対IS戦いで国際テロ組織PKK(クルド労働党)の分派のクルド勢力[クルド民主統一党(PYD)人民防衛隊(YPG)]支援 ペシュメルガ協力
②イラク:破綻国家 内戦、難民、国家分裂(2014年イスラーム国、クルド独立)
*直接の原因:1.湾岸戦争(1990-1年)シーア派、クルド人蜂起弾圧(米見捨てる)
2.アメリカのイラク侵攻、サダム政権崩壊(2003年)、イラク分裂
(2001年「9・11」→ アメリカ軍アフガニスタン侵攻タリバン政権崩壊
→ アフガニスタン破綻国家化)
3.シーア派政権[特にマーリキー政権在位(2006-2014年)]の悪政
(シーア派各派、サダムの治世にイランが庇護)
4.アラブの春
A.スンナ派弾圧→ 2014年 スンナ派反シーア強硬派イスラーム国誕生
B.クルド自治政府予算カット→ 2017年 クルド自治政府独立国民投票
③イエメン:最悪の人道危機 サウジ主導のアラブ連盟軍介入以来8千人以上が死亡
コレラ感染の疑い37万人
*直接の原因:1.イラン・イスラーム革命 1979年 シーア派革命輸出
2.アラブの春 2012年アリー・サーリフ政権崩壊
3.ハーディー政権崩壊 2015年 シーア派ザイド派首都サナア制圧
サウジ主導のアラブ連合軍サナア空爆
④湾岸諸国:サウジアラビア(世界第4位の軍事大国)「宮廷クーデター」2017年
M.B.N皇太子廃位し、国王の息子ムハンマド・ブン・サルマン(M.B.S)新皇太子
M.B.S 2015年国防大臣としてイエメン内戦介入
2017年6月 カタル断交(対イラン安全保障体制としてのGCC崩壊の危機)
2017年9月 サルマン・アウダら社会派イスラーム学者ら逮捕
サウジアラビア:シーア派、ムスリム同胞団、ワーッハーブの全てを敵に
*クルド人は存在するのか?
クルド人は「3千万人の人口を有する国家を持たない最大の民族」なのか???
クルマンジー語(北部クルド語)とソラニー語(南部クルド語)は互いに通じない。
*クルディスタン独立
1.1920年 セーブル条約でクルディスタン独立承認(1923年ローザンヌ条約で反故)
2.1946年 クルディスタン人民共和国(ソ連によってイラン北部に建国)
3.1990-1年 湾岸戦争:アメリカはサダムフセイン政権への反乱を煽り梯子を外す
→ クルド人自治地域(1970~ ハラブジャ事件1988年)に飛行禁止地帯
2003年クルド地域(自治)政府(KRG)
2014年 イスラーム国台頭によるイラク政府軍撤退、KRG事実上の独立
*クルディスタン民主党(KDP)、クルディスタン愛国同盟(PUK)の対立、政治的腐敗
*2003年サダムフセイン政権崩壊直後比較的治安定のクルディスタン復興バブル
*KRGの腐敗、マーリキーとバルザーニーの対立による中央政府からの配布金カット
*2014年以降、油田地帯のキリクークを支配下においたが経済回復せず
*2017年9月26日 クルディスタン独立投票
イラクだけでなく隣国トルコ、イランも反対 ←→ 賛成派イスラエルだけ
イラクは空路閉鎖
*クルド人は世俗国家に賛成か?
「失われたクルド人」東アラブの近代スーフィズム覚醒運動の担い手としてのクルド人
ハーリド・バグダーディー(1827年没)
トルコ共和国成立時のシャイフ・サイードの乱(1925年)
現在のトルコのマドラサ・ネットワーク
シリア前ムフティー・アフマド・クフタロー(2014年没)
アサドの御用学者ブーティー(2013年没)
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